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原価計算の種類と予実管理の実務①

原価計算の実務は難しそうと感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そこで予実管理インサイトでは、原価計算の基礎を4回にわたって解説していきます。

まず初回の本記事では、原価計算の目的を中心にご紹介します。

原価計算の目的

原価計算の意義

原価計算は、財務会計と管理会計の両面の性格を持っています。

それぞれの目的が違うことから、一言に「原価計算」といってもその手法は「財務会計用」と「管理会計用」に分けて処理を行っている事が一般的です。

  • 財務上の目的:財務諸表(B/S,P/L,C/R)を適切に作成すること
  • 管理上の目的:原価の統制と、関連する経営の意思決定を行うこと

費用収益対応の原則と費用配分の原則

財務会計の原則として、「費用収益対応の原則」と「費用配分の原則」というものがあります。

制度会計である財務会計は、「会社法」と「金融商品取引法」に基づき作成されます。
これら法律のなかでは「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に従うことが示されており、これは「企業会計原則(現ASBJが発行する会計基準)」を指すと解釈されています。

原価計算は、この企業会計原則において定められた原則に則った処理と言えます。
「費用収益対応の原則」
一会計期間に実現した収益に対応する費用を控除し損益計算を行う

「費用配分の原則」
費用性資産の取得原価を消費または販売の事実に応じて費用認識を行う

「費用性資産」とは、将来費用化される固定資産や棚卸資産を指し、現金/預金/売掛金などは「貨幣性資産」です。
企業活動は、貨幣性資産を費用性資産に変え、付加価値を加えてより多くの貨幣性資産を生むための活動と言えます。

財務会計上の原価計算

財務会計上の原価計算は、

  1. 資産の価値を正しく見積もる事によりBSを適正に表示すること
  2. 当期の費用を正しく測定/認識する事によりPLを適正に表示すること

上記のように資産/費用を適切に表示することを目的としています。

当期製造費用(材料費/人件費/経費)の内、

  • 売上として実現した収益に対応する費用を「売上原価」
  • 売上として実現しなかった費用を「棚卸資産」

このように捉えてそれぞれP/LとB/Sに計上を行います。

財務会計では、全部原価計算かつ実際原価計算(※1)を原則としています。

(※1)企業会計原則では、原価計算は「原価計算基準」に従うこととあり、
原価計算基準は標準原価計算を認める記載があります。
一方で発生した原価差額の調整を行うことで、実質的に実際原価に戻す必要があることを指示しています。

管理会計上の原価計算

管理会計上の原価計算は、

  1. 製品1単位あたりの単価を計算すること
  2. 標準の単価を設定し、目標を定めること
  3. 目標に対しての差異を把握し改善につなげること

上記のように目標の設定と改善のための意思決定を目的としています。(※2)

管理会計は制度会計ではないため、原価計算の方法は製品形態ごと、
会社ごとの特性にあった計算がなされています。

ここに原価の予実管理が複雑化し標準的な管理ができない理由があります。
製品製造業の組別/工程別の原価計算、ソフトウェアの人件費配賦、
製造するものが材料系/組立系かでもその特性は大きく違います。

次回「原価計算の種類と予実管理の実務②」では、
標準原価計算と実際原価計算」についてより詳しく解説します。

(※2)原価計算基準の第一章一項の目的を解釈したものとなります。

いかがでしたでしょうか。次回は標準原価計算と実際原価計算を解説します。

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著者プロフィール

冨田貴大
1991年生まれ、愛知県名古屋市出身。
名古屋大学経済学部を卒業後、富士フイルム株式会社にて勤務(2014年~2021年)、経営企画/経理部にて原価計算を中心とした管理会計や単体会社の経理処理/財務諸表作成を経験。

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