予実管理インサイト

経営管理・経営企画に役立つ情報を発信

予実管理インサイト

経営管理・経営企画に役立つ情報を発信

内部統制に欠かせないワークフロー。システム導入で考慮すべきポイントとは

企業における業務執行の適正さを確保するために必要な内部統制。大企業による組織的な不正行為の発覚などによって、近年「内部統制」の強化が社会的に求められるようになっています。企業を巡る不祥事をなくすためには、業務が不正なく、適切に遂行されるようシステムとして確立してく必要があります。

本記事では、内部統制の強化とワークフローシステムの導入についてご紹介します。

ワークフローとは?内部統制との関係

ワークフローとは

ワークフローとは、「申請」や「承認」など、企業におけるさまざまな業務上必要な手続きの流れのことです。統一したルールに従って業務ごとのフローを明確に定義していくことで、内部統制が強化されます。ワークフローシステムとは、業務上必要な手続きを自動化し、フローの明確化を実現するためのツールとなります。

内部統制との関係

ここでは、ワークフローシステムの導入が、内部統制へどのような影響をもたらすかについてご紹介します。

ワークフローシステムを導入することで期待できる効果として「業務・申請・承認のフローが明確になる」点と「不正の防止や適切な証跡管理ができる」点が挙げられます。

業務・申請・承認のフローが明確になる

ワークフローシステムには、申請フォームや承認ルートを登録できる機能が搭載されています。申請内容に応じて適切なフォーマットが表示され、設定した承認者へと自動で申請が流れていきます。違ったフォーマットで申請されたり、適切な承認フローを経由していない、申請書の提出先を間違えたなどの問題が生じることはなく、業務手続きの標準化が可能となります。

不正の防止や適切な証跡管理ができる

ワークフローシステムを導入することにより、購買業務や受発注業務などを行う際に必ず承認を挟むように設定できるため、不正が発見されやすくなります。また、システム化することにより、いつ誰が承認をしたのか、どのルートで承認されたのかという記録が残り、経理書類をワークフローシステム上で承認へ回す際は、証憑書類をデータ化して添付する必要があります。経理に関する証憑書類をデータ化することで容易に改ざんできないようになるほか、正確な情報として管理・保存することが可能となります。

手続きの証跡を管理していることが組織内で認知されていれば、より不正も起こりにくくなっていくでしょう。

内部統制とは?目的や意義を解説

内部統制とは

内部統制とは、組織の業務の適正を確保するための体制を構築していくシステム(制度)のことで、組織がその目的を有効・効率的かつ適正に達成するために、その組織の内部において適用されるルールや業務プロセスを整備し運用することです。コーポレート・ガバナンスの要とも言え、近年その構築と運用が重要視されています。

例えば、発注業務や購買業務では実行前に承認を得なければなりません。これを疎かにすると、キックバックや商品の横流しといった不正行為が発生するおそれがあります。こういった業務が担当者間の裁量により完結してしまい、かつそのフローが経営から見えない状態だと内部不正のリスクを高めてしまうことになります。そのため、業務を適正に行うためのルールや仕組みを構築しなければならないのです。

金融庁の定義によると「4つの目的」があり、内部統制の構築には「6つの要素」が必要であるとされています。

4つの目的

①業務の有効性・効率性

 事業活動の目標の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること。

②財務報告の信頼性

 開示する財務諸表と財務諸表に重要な影響をおよぼす可能性がある情報について、その信頼性を担保すること。

③法令遵守

 事業活動に関わる法令や会計基準もしくは規範、各社の倫理綱領やガイドラインを順守させること。

④資産の保全

 会社の資産(有形・無形、人的資源も含む)の取得やその使用、処分が正当な手続きや承認のもとで適切に行われるように資産の保全を図ること。

6つの要素

①統制環境

 統制環境とは、組織の気風を決定し、統制に対する組織内のすべての者の意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に及ぼす基盤をいう。

②リスクの評価と対応

 リスクの評価とは、組織目標の達成に影響を与える事象のうち、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価するプロセスをいう。リスクへの対応とは、リスクの評価を受けて、当該リスクへの適切な対応を選択するプロセスをいう。

③ 統制活動

 統制活動とは、経営者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定められる方針及び手続きをいう。

④情報と伝達

 情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう。

⑤モニタリング(監視活動)

 モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいう。

⑥ITへの対応(情報技術)

 ITへの対応とは、組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続き(情報管理規定など)を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のITに対し、適切に対応することをいう。

なぜ内部統制が必要なのか

内部統制システムを構築し、運用していくことによって、会社の信用が向上します。従業員や経営者の法令違反、判断ミス、組織や規定の未整備による情報漏洩、無計画なITの導入による業務の混乱・非効率・不透明化など、企業は様々なリスクを抱えています。それらを適切に処理するために、上記の6つの基本的要素を踏まえて、4つの目的を追求していく業務の適正を確保するための体制を構築し、適切なルールや業務プロセスを整備して運用することが、企業の信用度向上によって得られる社会的地位の向上や収益の確保のための最善の策と考えらます。

ワークフローシステム導入の際、考慮すべきポイント

ワークフローシステム導入の際に、まず行うべきことは自社の課題と導入目的の明確化です。なぜ導入するのか、どのような業務フローを改善したいのかを整理し、優先度をつけましょう。導入の目的を明確にすると、途中で意見がブレたり、方針を見失ってしまったりすることを避けられます。

以下では、選定していく際のポイントとして4つ紹介していきます。

①申請フォーマットは利用しやすいか

ワークフローシステムの基本機能となるのが申請フォーマット作成です。各種テンプレートから申請書が作成できたり、Word、Excelなど既存の申請書の流用が可能だったり、入力補助機能(数値の自動計算、過去の申請内容の流用など)や入力不備の警告機能が備わっているものもあります。

システム導入の際に、これまで行っていた業務フローや使用している申請書などのフォーマットを変更することには、少なからず抵抗があるものです。大幅にやり方を変更してしまうと、現場が使いこなせるまでに時間がかかったり、使い方等の説明会を開く必要が出てきたりと、各所に負担が生じてしまい思うような効果が得られない可能性も考えられます。現場の意見なども参考に、使いやすいフォーマットで運用できるかを検討しましょう。

②複雑な承認ルートに対応できるか

稟議や申請の内容に応じて承認ルートが異なることがあります。例えば、申請する金額によっては役員クラスの人からの承認が必要である場合など、さまざまなパターンが考えられます。また、複数の承認者への同時申請の可否、承認者が不在の場合の代理承認の可否、否認された場合のフローなども整理し、それらの分岐や承認ルートの設定が可能なワークフローシステムを選びましょう。

③既存システムとの連携

自社に導入済みのシステムとの連携ができる製品なら、データ入力の手間を省けたり、決裁後の処理をスムーズにしたり、といったことが可能です。社員のデータベースとの連携が可能であれば、該当情報の記入が不要となり、業務効率化や生産性向上に繋がるでしょう。

ワークフローシステムを有効活用するために、自社内で導入済みのシステムがある場合は、事前に連携が可能かどうかをチェックしておくことをおすすめします。

④その他、自社要望にどこまで応えられるか

ワークフローシステムには申請フォーマット作成、承認ルートの設定、進捗の可視化などの基本機能のほか、多様な付帯機能が搭載されています。

チャットシステムやGoogleアカウントと連携でき、差し戻しや承認作業においてのコミュニケーションをとりやすい環境が作れたり、スマートフォン用のアプリが用意されている製品もあります。

多機能な製品は魅力的に見えてしますが、「自社の課題と導入目的」に立ち返り、その機能が本当に必要であるかを検討し、コストパフォーマンスの最大化を図りましょう。

まとめ

近年、社会的に求められるようになってきた内部統制。その強化に欠かせないものとしてワークフローシステムを紹介してきました。ワークフローシステムを導入すれば内部統制を完璧に遂行できるわけではありませんが、導入を機にこれまで属人化していた業務フローを整理できたり、適切な証跡管理によって不正が起こりにくい環境を作ることができます。

さまざまな製品を比較して、自社の課題と導入目的に合ったものを選定し、内部統制の強化を目指しましょう。

この記事を読んだ方へおすすめ