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迅速な投資判断へ!最新見込を可視化する予算管理術

成長企業にとって戦略的かつスピーディな投資判断や、予算の再配分を行う事は成長速度に直結する重要な要素であり、そのためには予算状況の可視化及び精緻な見込更新を行う体制づくりが不可欠です。

株式会社チームスピリットでは、全社を巻き込んでリアルタイムに見込更新を行う体制を構築しており、期中でも経営戦略に沿ったスピーディな投資判断・予算の再配分を行っています。しかしこうした予実管理体制はここ数年で構築したもので、それまでは「予算の使用状況が担当者の頭の中にしかない」「着地見込が見える化できておらず追加の投資判断を行いにくい」といった課題を抱えていらっしゃいました。現在の予実管理体制を構築するに至るまでの過程や現在の管理手法を、同社 経営管理チームチームリーダーの審 恭輔(あきら きょうすけ)氏にお伺いしました。

精緻な見込更新のための管理手法

まず予算状況の見える化と各チームでの見込更新の定着化を行った

以前は予実管理にどのような課題を感じられていたのでしょうか。

審:私は2020年の3月、ちょうどコロナがピークを迎えたタイミングでチームスピリットに入社しました。約半年間、経理チームで決算や請求書の仕訳、紙の請求書を全てPDFに置き換えて決算処理を行うといった業務を行ったのち、経営企画チームに異動しました。異動当時は予算管理について体系だった仕組みがなく、期初に立てた予算をどう執行しているかが把握できていない状況でした。一番困ったのは、営業利益や経常利益の計画に対する着地見込が見える化されていないことでした。期中に投資したい施策はどんどん出てくるのに、その判断を行うための材料が揃っていない点が非常に課題だと感じました。そのため、まず予算状況の見える化に着手しました。

予算の見える化にあたって、最初に取り組まれたことは何でしょう?

審:弊社には約10チームが存在しますが、それぞれが今いくら予算消化をしてるかがわからない状態でした。そこで、まずは各チームが予算をどのぐらい持っていて、「ITEM」(プロジェクトや施策など予算内容)ごとにどのぐらいの消化率なのかを自分達で把握してもらうために、エクセルで細かい予算管理シートを作り配布しました。

こちらは当時使用していたエクセルのサンプルです。項目の切り口としては、「地域」、「部門」(チーム)、期初予算または追加予算の「予算区分」、「勘定科目」、「ITEM」(予算内容)と、かなり細かく分けていました。

その各項目ごとに、毎月の予算を各チームに入力してもらいました。月次決算が締まり実績が出たあとは、会計システムから取り出した生データをそれぞれのチームに還元して、そのデータを見て各チームが実績を入力し、またそれを参考にしながら翌月以降の見込を更新する運用を毎月行っていました。

期初に立てた予算をオーバーしていないかどうかは、予算比の値を計算した列で確認していました。

このエクセルファイルはチームの数だけあったということですが、実績の還元をするにあたって、手作業で各チームに該当する実績を分けていたのでしょうか?

審:はい、経理担当者が実績を毎月約10チーム分に切り分けて還元をしていました。

見込もチームごとに入力していただくということは、見込も約10個のファイルに別れてしまうということでしょうか?

審:はい。それだと全体での着地見込がわかりづらいので、各チームと金額が大きい項目に関してはコミュニケーションをとり、より精度の高い数値に修正をした後に、約10個のファイルを毎月ひとつに統合していました。――現在は予算策定から実績突合・差異分析、見込管理、レポーティングまで一連の予実管理業務を、予実管理クラウド「DIGGLE」で行っていただいています。全体の業務フローについて図にまとめていただきましたが、簡単にご説明いただけますか?

予実管理クラウド「DIGGLE」とは
チームスピリットでの「DIGGLE」を活用した予実管理フロー

審:当社は月次の決算締めに10日前後かかるため、まず月末25日前後で当月と翌月以降の見込を各チーム「DIGGLE」で更新してもらいます。この時更新される当月見込は実績と大きなずれがないので、このタイミングで先月時点で出していた見込との差分分析を行います。その後、決算の確定後に総勘定元帳を「DIGGLE」に取り込み実績を反映し、10日前後にある経営会議、取締役会で決算の確定と利益見込を報告します。その後、各チームに「DIGGLE」上で実績を確認してもらいます。毎月このサイクルを回していく形で運用しています。

ただ月末25日前後に見込更新の依頼はするのですが、現在は基本的に各チームで変更が発生する度に「DIGGLE」で更新をしてもらうようにしています。そのため通期の営業利益の見込が日々アップデートされるような運用体制になっています。

エクセルでの予実管理から「DIGGLE」での管理による変更点

※チームスピリット様における予実管理クラウド「DIGGLE」導入効果の詳細は、下記インタビュー記事をご覧ください:

https://diggle.jp/case/teamspirit/

予算内容単位で差異要因を把握することで着地見込の精度向上

各業務フローのポイントもお伺いできればと思います。まず「先月からの差分分析」の部分に関して(②)、例えば期初の予算との比較や、前月立てた見込からの比較など方法は色々とあると思うのですが、チームスピリットさんでの分析のポイントはどこでしょう?

審:戦略に紐づいて予算がきちんと使われているかどうかを見たいので、かなり細かい目的別の「ITEM」単位で管理をしており、それが前月立てた見込と比べて増えたか減ったかをみています。積み上がると大きな差異に繋がるので、10万円程度でも増減しているものに関しては要因を個別に見ていきます。増えることは基本的にないのですが、減らした分の予算をずらし忘れているチームは結構あるので、利益の見込を正しく把握できるように計上時期の確認やズレた要因の質問をするといったフォローをしています。そのため基本的には「ITEM」ごとの年間トータルの差をまずは見ています。

予算内容単位で差異理由を明確化することで、翌月以降の見込の精度を上げることができているのですね。「ITEM」ごとに前月からの差分を比較するのは、「ITEM」が100個、200個ある中だとエクセルで比較するのは結構大変だったのではないかと思うんですけれども、「DIGGLE」を導入いただいたことでの変化はございますか?

審:良い方向に大きく変化しました。エクセル管理では、記憶を頼りに目検で違和感のある値を確認していたので、確認漏れもありましたし、相当手間がかかっていました。今は総勘定元帳を「DIGGLE」にアップロードするだけで、予算ID(※)により自動的にマッチングされて予実の突合がされるので圧倒的に業務負担が軽くなりました。正しい実績が入ることは正しい見込の作成にも繋がるので、その効果も大きいと思います。また「DIGGLE」の差異分析機能により、期初予算や先月時点見込との差異を「ITEM」毎に一目で確認できる事も非常に大きいです。

※「DIGGLE」の予算IDとは

「DIGGLE」では差異のある項目をドリルダウンしていくことで明細情報まで閲覧でき、瞬時に差異の要因把握が可能:

※サンプル画面

スピーディな投資判断・予算の再配分のための管理手法

管理会計の管理単位で稟議・経費申請〜予実突合まで一気通貫で実施

次に各チームに対して前月の実績を還元する業務フロー(④)に関して、以前はエクセルでやっていらっしゃったということですが、「DIGGLE」を導入いただいて変化はありましたか?

審:導入前は、先ほど申し上げた通り総勘定元帳を切り分けて配布し、各チームで入力をしてもらっていたのですが、今は稟議や経費申請、経費精算をするときに、「TeamSpirit」における予算「ITEM」ごとの管理番号を入力してもらっています。それが自動的に会計システムに取り込まれて総勘定元帳として吐き出されるので、「DIGGLE」に総勘定元帳のCSVファイルをアップロードするだけで予実の突合ができるるようになっています。

働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」とは

経費精算と連携することで、予算管理がかなり効率的かつ精緻になっているのですね。より詳しい連携方法を教えていただけますでしょうか?

稟議・経費精算と予実管理の連携フロー

審:「TeamSpirit」のサンプル画面を使ってご説明します。まず社員には電子稟議の機能で、予算の稟議を起案してもらいます。「予算措置の有無」の項目に、「DIGGLE」の「予算ID」ごとに発行されるURLを貼ってもらいます。私は決裁する立場なので、このURLから「DIGGLE」に飛んで本当にこの金額の予算を取っているかどうかを見に行きます。

確認をして予算が取られていなかった場合は「予算が取られていないから駄目ですよ」と話したり、金額が予算の見込とずれていたら「見込を修正してください」という指示をして直してもらったりしています。決裁の意思判断をするときにも「DIGGLE」を使っているということになります。

その後請求書の処理申請をしてもらうのも「TeamSpirit」の経費精算機能で行います。「予実管理番号」の項目に予算「ITEM」の番号を入れてもらい、それを経理が予算の有無や金額にミスがないかを確認した上で承認します。そして実績の確定後に会計システムから吐き出される総勘定元帳を「DIGGLE」にアップデートすると自動マッチングされるという一連の循環を作っています。

予実管理や予算管理はやはり単体ではなく、経費精算などにも繋がってくるものですものね。そこが分断されてると、稟議や経費精算の際に予算が取れているかの確認に手間取られてしまう例は非常に多いんじゃないかと思うんですけれども、予算を使うことに対して入り口から出口まで非常にシームレスなフローを構築されていますよね。

審:そうですね。元々は稟議を連携して行う想定はしてはいなかったのですが、URL一つで予算の有無の確認に使えるということに導入後に気づき、付加しました。

経営会議では前月(直近の見込)との違いを重点的に報告

次に、差分分析を実施されてから経営会議に臨まれるということですが(③)、経営会議や取締役会で経営報告をする際に心がけていらっしゃることはなんでしょうか?

審:我々はかなりスピード感を持って投資計画などを日々アップデートしているので、先月など直近発表したところから変わったポイントは必ず説明するようにしています。なので、期初からの計画の差異と、前月との差異はマストで報告しています。

期初に立てた予算との比較はもちろんするんだけれども、それと同じぐらい、あるいはそれ以上に直近の見込から何が変化してるのかを重点的にご報告されているということですね。

審:はい。足元でアクティブに何が起きているのかを重視しています。

スピーディな投資判断を行うための社内へのインストラクション

稟議や経費申請との連携は、事業部側の協力も不可欠な部分だと思うのですが、入力をしてもらうためのコツはありますか?

審:稟議や経費清算においては、管理番号が入っていないと決裁・承認をしないというルールになっています。ただ全く新しい予算や経費申請はそこまで多くはなく、ルーティンのものが7、8割を占めます。新しいもの以外は前月のものをコピーして、金額や日付を直せば良いので、一度運用を開始してしまえば、次月からの運用はそこまで手間ではないです。新しい取り組みで新しい先に支払いをする場合などだけ、管理番号を自分たちで確認して入れていただくというのをやってもらっています。

毎回たくさんのフォーマットを入力しなきゃいけないというよりは、一連の仕組みとして組み込まれて体制として出来上がっているということですね。また関連して、各チームで還元された実績を確認して当月次月以降の見込を更新してもらうにあたっては、経営企画チームから更新する際の注意点など何かインストラクションを出していることはありますか?

審:前月以前の実績は「DIGGLE」で見れる状態になっているので、予算の見込は「過去のトレンドなどに応じて立ててください」と伝えています。また仮に1個のアイテムが1万円2万円の差異だとしても、チームで積み上がると20万円、30万円になって、それが全チームで集まると200万円、300万円になってくるので、「細かくても直してください」とお願いし、その意識は強く持ってもらっています。

会社によっては、費用の予算に関してはバッファを持ちたい、多めに取っておきたいというところもあるかなと思うんですけれども、チームスピリットさんでは本当にかかりそうな金額を入れる文化が根付いているのでしょうか?

審:これはエクセルで予算の見える化を行った時から社内に伝えていることなのですが「予算をオーバーするのはもちろんいけないことだけど、予算を目的に沿って活用しないことも同じくらいいけないことです」と言っています。予算は成長のための投資として取ってるものなので、使わないのであれば他に使いたいチームや会社として使うべきものに振り分けたいということを、伝え続けています。それにより、各チームから「この予算は返します」や「状況が変わってここまで使わなくなったので予算を削ります」と自ら言ってくれるなど、予算に対して意識を持つようになってくれました。あとは、もちろん追加で予算が必要になる状況も起こり得るので、そこはスピード感を持って意思決定をして、必要なところには追加投資をするということをかなりフレキシブルに判断してやっています。だからこそ各チームには基本的にオネストベースで見込更新をしてもらい、どうしても足りなくなったら追加の予算としてスピーディに承認していくという運用ができています。そうした追加予算も「DIGGLE」で通期の見込をリアルタイムで把握できるようになったからこそ、スピーディーに決裁できています。

筆者プロフィール

株式会社チームスピリット Director 
経営管理チーム チームリーダー 審 恭輔 (あきら きょうすけ)

メガバンクグループに入行後、銀行・証券それぞれの領域で中小零細企業から大企業まで幅広いカテゴリーの顧客を担当。2020年3月にチームスピリットにジョイン。戦略企画室 経営企画チーム チームリーダーを経て、2023年1月より経営管理チーム チームリーダーに就任。

株式会社チームスピリットにおける、予実管理の実例をお届けしました。この実例からわかるように、戦略的かつ迅速な投資判断・予算の再配分を行うためには、全社を巻き込みスピードと精度を兼ね備えた予実理体制の構築が不可欠だということがわかりました。

予実管理クラウドサービス「DIGGLE」は、経営管理フローの最適化と経営情報の一元化により業務効率化と組織間のコラボレーションを促進し、迅速で質の高い意思決定を支援する予実管理クラウドサービスです。予算策定・予実突合・見込管理・レポートといった、経営管理業務全体を「DIGGLE」上で一気通貫で行うことで、予実ギャップの要因把握・アクションの早期化と業績の着地予測制度の向上を実現します。

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