「事業成長を止めることなく、上場審査及び上場企業基準の予実管理体制を実現するには?」をテーマにパネルディスカッションを開催しました

IPOを目指す企業に対しては、監査法人から様々な要求が為されます。中でも市場から評価を受けるために、着地見込予測と実績数値の乖離を最小化することは重要視されます。しかし、IPOに向けて事業成長をアグレッシブに求められるフェーズにおいて、着地見込予測と実績数値の乖離を最小化することは至難の業です。
先日、DIGGLE株式会社は、2022年12月に東京証券取引所グロース市場に上場されたオープンワーク株式会社の執行役員で、コーポレート部門を管轄されていらっしゃる広瀬 悠太郎氏をお迎えして、セミナーを開催しました。事業成長を止めることなく、上場審査及び上場企業基準の予実管理体制を実現したポイントについてお話を伺いしました。
※同社では上場準備を機に予実管理の精緻化を目指し、予実管理クラウド「DIGGLE」を導入いただき、ご活用いただいております。
予実管理の全体像について

– まずは予実管理の全体像についてお伺いできればと思います。そもそもの話ですが、予実管理の目的について広瀬様のお考えを伺えますでしょうか。
広瀬:目的は大きく2つあると考えています。1つ目は、会社の成長速度について定量化し、社内の共通見解を持つこと。2つ目は、業績予想を投資家に開示しますので、開示した数値にコミットするための羅針盤にすることです。
– 今2つの目的についてお伺いしましたが、現時点でどの程度目的を果たせているか、アップデートする余地は残っていらっしゃるか、はどうでしょうか。
広瀬:アップデート余地・伸びしろはまだまだ残っていると考えています。当社は2022年12月に上場しましたが、最低限の審査基準をクリアできたというだけで、「このような分析が出来たら経営に対してより付加価値を出していけるのではないか」といったことはよく思っています。
– 広瀬様がご入社されてからIPO準備を始められたと思いますが、IPOを目指すとなった時に、どのような課題があって、どのような状態を目指そうと考えていらっしゃったのですか?
広瀬:私が入社したのが2019年2月で、その翌年に主幹事証券会社を選びました。私が経理一人目で入社して、まずは税理士に外出ししていた月次決算の内製化などから始めました。予算については社長の頭の中にあっても、会社として利益計画を作成していませんでした。全社の共通見解になっていなかったので、予実比較などもしていませんでした。なので、まずは共通見解としての予算を策定して、比較が出来る状態づくりなどを目指しました。
– 本当に0から体制をつくってこられたんですね。話は少し変わりますが、予実管理に関係なく、上場当時のコーポレートチームの体制をお伺いしてもよろしいでしょうか?
広瀬:2022年12月に上場したタイミングですと、10名程度の組織でした。いわゆるバックオフィス業務を担当しているメンバーで、経理、法務、労務、総務、人事、内部統制、経営企画併せてですね。会社全体の従業員数は上場当時で80名前後でした。
予算策定について

– 予算策定についてお話をお伺い出来ればと思います。年度の予算を策定する際のフローについてお伺い出来ますでしょうか。
広瀬:当社は12月決算なので、12月の取締役会で予算の決議を行う前提で段取りを組みます。予算策定自体はだいたい10月から動き出しています。費用サイドで言うと、各部門から「DIGGLE」の機能を使って費用見込予算を集めます。売上サイドも同様で、KPIを元に作成してもらった売上見込を事業部門で「DIGGLE」に記入してもらいます。集めた費用見込予算と売上見込予算を合わせた上で、予測利益数値を見ながら「もう少し伸ばすべきじゃないか」などの議論を積み重ねて、最終的な全体予算をつくっていきます。
– 事業部の方が提出される見込予算の数値ですが、おそらく過年度の実績などのベースとなる数値を参考にしながら作成されていらっしゃると思うのですが、どのような数値を参考にされていらっしゃるのですか?
広瀬:前年度実績をベースにしつつ、「DIGGLE」上で減らす数値、積み増す数値などを調整している感じですね。
– 調整された数字を合わせてボトムアップで予算を積み上げられて、その後議論されているということでしたが、経営の意思を反映させることもあるかと思います。どのようなステップを経て最終的な予算に固めていらっしゃいますか?
広瀬:「DIGGLE」上で事業部から予算を提出してもらうと、売上から純利益まで反映されてレポートが出てきますので、その数値を昨年実績と比較し、「YOY(前年比)この数値で良いのか?」などを経営メンバーで見ながら調整しています。
– 経営陣も含めた会議体で議論されているんですね。議論された結果、もうちょっとここの数字は頑張りたいよね、と言う話になることもあるのではないかと思いますが、それは広瀬様のチームがハブとなって事業部に指示を出すなどのフローになっていらっしゃいますか?
広瀬:そうですね。上場準備中などはまさにそのようなフローでした。
– 事業部とのやり取りは何往復ぐらいするものですか?
広瀬:それほど往復は多くはありません。2回、3回ぐらいですかね。
– そうすると、予算策定のプロセスとしては10月にスタートすれば、12月には問題なく完成するというスケジュールになっているわけですね。
広瀬:はい、そうですね。
– ありがとうございます。続いて事業部から提出される数値の蓋然性についてお伺いしたいのですが、経営企画や経理の目を通して経営にあげなくてはいけない中で事業部が出してきている数字の蓋然性をどのように判断されていらっしゃいますか?
広瀬:蓋然性に関してはすべてを判断しきるのは難しいというのが正直なところです。例えば売上見込として100万円という数値が出てきたら「その内訳はどうなってるのか?」「このKPIと連動して、このような数字にならないのか?」といったコミュニケーションが取れれば良いのですが、実際のところ全ての対象に対してそこまではやりきれていません。
– こればかりは、都度々々コミュニケーションをとりながら確認しているということですね。また期中に予算と実績で乖離が大きくなることもあるかと思いますが、そういった場合、期中に予算を修正することはありますか?
広瀬:IPO準備中に、予算を修正することは何度かありました。1年に3回ぐらい修正したこともありました。例えば、予実の乖離が大きくなった時や、審査特有かと思うのですが、中間審査のタイミングで「このままだと蓋然性について説明しづらいな」と考える時などに修正をしていました。
– ありがとうございます。次のお話に移らせていただきます。貴社をご支援させていただくなかで、他社様と比較して精緻な管理をしている印象があります。勘定科目より細かい単位、使用目的ベースぐらいの単位で細かく予算を作成されていらっしゃいますよね。そのため予算を作成されるのも大変じゃないかと思っています。そのような細かい粒度で予算を管理していく目的や意義をお伺いできますでしょうか。
広瀬:そうですね、まずは勘定科目単位で事業部に予算を作成して欲しいと伝えても上手く伝わらないということが挙げられます。そのため、勘定科目より細かい粒度(弊社では品目と呼んでいますが)で予算を作成するようにしています。例えば、「業務委託:A社さんとの取引」「業務委託:B社さんとの取引」みたいな単位で予算を策定し、これらを積み上げると業務委託費という勘定科目になるような設計ですね。こういったレベルでやっています。このようにすると、事業部の人間も数値を入れやすいし、わかりやすいし、管理しやすいという特徴があります。
また決算を締める時に品目ベースで締まる直前の実績と見込を比較して、入れ漏れがないか確認をしています。例えば業務委託先のA社で差異が出ていたりすると請求漏れがあるんじゃないかと気づくことが出来たりします。そのようなこともあるので、品目ベースでの粒度で管理していると決算の精度が上げられるという利点もあります。
月次の業務フローについて
予実突合

– ありがとうございます。次に予実突合というテーマでお伺いします。期初に策定した年度予算に対して、月次で業務を回すフローがあるかと思います。具体的には、月次決算が締まって予実突合をするであったり、見込数値を管理していくであったり、経営の方へのレポーティングをしていくであったり。そういった、月次で行っている業務の具体的な流れをお伺いできますでしょうか。
広瀬:例えば6月の動きを例に挙げます。5月末には事業部のKPIや状況がわかったり、費用見込を更新出来る状態になるので、6月3営業日目ぐらいまでに見込を更新してくださいと、事業部に対して依頼を出します。ここでの更新は、年度末(当社の場合は12月末)までの見込を更新してもらっています。
月次決算が6営業日ぐらいで締まるので、出てきた実績を予算と突合し、予算と実績の差異検証、見込と実績の差異検証を行います。その上で差異要因を調べ、月の中旬ぐらいに開催する取締役会や経営会議などでレポーティングしていく流れとなります。そのため、会議体に向けて分析などを毎月進めています。
– 差異要因の分析をされていらっしゃるとのことでしたが、特に注意している点や着目している点はございますか?
広瀬:「策定した予算をしっかり使っているか」であったり、差異が出ている点は勿論確認しています。ただ科目によって温度感は変わってきます。この科目はズレても良いが、この科目は差異を0にしなきゃダメだな、といった緩急をつけながら差異分析を行っています。
– 「予算をしっかり使っているか」に着目されているというお話がありましたが、使わなければお金は余るのでそれでも構わない、という考え方もあると思います。申告した予算はしっかり使うべきだとお考えになる背景を改めてお伺いできますでしょうか。
広瀬:単純に予算を入れているものを使っていなければなぜ使っていないのか?と確認する意味合いもありますし、事業部サイドで何か施策の変化があったのかもしれない、といった方針や施策変化の確認の意味合いもあります。こちらは、特に最新予測値である見込数値と実績数値を比較しながら確認をしています。
– ありがとうございます。もう一つ、科目によって緩急をつけていらっしゃるとのことでしたが、具体例があれば伺えますでしょうか。
広瀬:細かく見ていない科目から言いますと、見積もりが難しいものですね。だいたいこれぐらいの数値になるかな、といった予算の立て方をしており、ズレても仕方がないかなと思っています。例えば、弊社では福利厚生費で自己啓発制度があるのですが、年間12万円まで一人当たり利用することが可能となっています。そういったものは、誰がいつ何円使うかわからないので、差異が発生しても仕方ないと思っています。
逆に、特に注視して見ている科目は、売上、人件費、売上・費用の中でも構成比が高いものですね。大きく差異が発生していた場合は、原因は何か確認していきます。例えば人件費に大きく差異が発生していたら、人員計画に差異が生じているのかもしれない、などと考えたりします。
– 人件費や広告宣伝費のようなズレやすい科目はあると思いますが、差異を少なくしていく工夫はありますか?
広瀬:現状弊社では事業進捗に応じて費用を調整しており、期初に立てた計画対比で予実差異を少なくしていく工夫は難しいと考えています。勿論、目標となる売上や利益を下回らないことは意識しています。一方で、見込と実績の差異はよく見ています。予算は期が進むにつれて状況が変わっていくので、どちらかというと見込と実績の差異の方をよく見ています。
– なるほど。そうしますと、見込と実績の差異を少なくする工夫はございますか?
広瀬:これは見込数値を事業部にしっかりと入れて貰うに尽きます。そのために、事業部側が見込を入れやすいフローを作っています。事業部側からすれば、見込数値入力は業務の優先順位が下がりがちなので、事業部側が入力しやすくすることは勿論、何をどこにどのように入力すれば良いかをマニュアル化するなどの工夫はしています。
見込管理

– 今の話の流れで見込管理についてもお伺いしたいのですが、見込であったり着地予測を事業部から吸い上げている会社はまだまだ少ないと思います。貴社で見込管理をやる目的についてお伺いできますか?
広瀬:先程も少し触れましたが、予算は12月に立てるので、期中に状況が変わってきてしまいます。そのような状況の中で見込を更新していかないと、年間の目標を達成できるかも手探りの状態になってしまいます。今、見込を年間目標対比でどの程度まできているのかを見るため、業績予測を見える化するためにやっています。
– 予実管理だけだと過去との比較となってしまうので、見込を更新することで、着地予測を常に更新し、年間目標との将来的なギャップを早めに出せるようにして、アクションも早めに打てるようにしているということですね。
次に見込管理のフローについてお伺いさせてください。先程、月次の業務フローの話の中で事業部サイドで見込を更新していると仰っていましたが、事業部は月に1回見込を更新しているという認識で間違いないでしょうか?
広瀬:実はもう少し頻度高く更新をしていて、毎月3営業日ぐらいまでのタイミングで更新して貰うというのは先程お伝えしたとおりですが、その他に月の下旬にもう一度事業部サイドで見込を最新化してもらっています。
– 下旬のタイミングで最新化された見込数値については、経企や経営チームが確認していらっしゃるのでしょうか?
広瀬:はい、見ています。
– そこで月初の報告と差異が大きく発生していれば、その差異要因を把握しにいくということですかね?
広瀬:把握しにはいきますが、実際にはそこまで差異は大きくならない傾向にあります。
– なるほど。事業部で見込数値を提出する業務は、どのようなレイヤーの方が担われていらっしゃるのでしょうか? 広瀬:各部門で責任を負っているのは部門長レベルの方です。
事業部間連携

– 貴社のような形で見込管理をしっかり行っていくとなると、経企と事業部間の連携は不可欠だと思います。特に貴社は、0から見込管理ができる状態を構築されていらっしゃるので、そういった今までやってこなかったことを事業部サイドに対応して貰うにあたって、事業部サイドから協力を得る工夫などがあれば教えていただけますか?
広瀬:先程お伝えしたことと重複してしまいますが、何をするべきかをわかりやすくしておくということですね。社内のイントラネットのwikiに記載するとか、マニュアルに記載するとか。あとは、目的を再三伝えていくことが大事だと考えています。
– 見込数値を入力しやすいフローを用意するといったお話もあったかと思いますが、具体的にはどのようなものになりますでしょうか?
広瀬:「DIGGLE」を使って見込管理をしているのですが、「このボタンをクリックしたら、ここが開くから、そこに、このような形で数値を入力する」といったことを手順化しています。
– 予実管理体制、見込管理体制の高度化を進めるなかで、事業部サイドからポジティブなリアクションなどはこれまであったりしますでしょうか?
広瀬:前提として、売上などは元々管理する風土があったので、そこまで大きな軋轢のようなものはありませんでした。ただ費用面で言いますと、目標利益との差分が見えるようになったり、現時点であとどれぐらい投資できるか、などがタイムリーにわかるようになり、アクションが早めに打てる点で助かるという声はあったりします。
上場準備について

– 次のテーマに移らせていただきます。今回上場準備をテーマにしていることもありますので、その文脈でお話をお伺いしたいと思います。
通常IPOは一つの企業で何度も行うことでは無いと思いますが、実際にIPOを目指し実現された過程で、どのような点が難しかったですか?特に予実管理領域で、苦労された点や特徴的だった点などあれば教えていただけますでしょうか。
広瀬:先程も少し触れましたが、何回か予算を修正をしたという点ですね。予実管理をはじめたばかりということもあり、予算の精度が高くなかったことも要因です。その他にも、コロナショックなどマクロ環境の変化の影響もあり、予算対比で実績がブレるようなこともありました。そのため中間審査などの節目のイベントに向けて、しっかり説明できるように修正をしており、多いときで3~4回の修正を行っていました。
– 予算を修正する、何度もつくる際にどのようなことが大変だったのかお伺いできますか?
広瀬:「DIGGLE」を使っていたのでエクセルで行うよりも楽にはなったのですが、何回も事業部に収集依頼をしたり、人員計画を引き直したりする作業は大変でした。細かな資料の用意を含めて見込や予算をつくっていかないといけないので、それらを何度もやるとなると、日常業務と並行してやるのが大変でした。
– 修正予算については、どこをどのように変えたのか、その背景などは聞かれたり、説明責任があったりはするのでしょうか?
広瀬:はい。なぜ変えたのか?どこを変えたのか?は、セットで説明する必要がありました。
– ちなみに数値を修正したときに、前の計画を立てたときの根拠がわからなくなることなどはありませんでしたか?もしそういったことが無ければ、工夫されていた点などがあればお伺いできますでしょうか?
広瀬:エクセルの焼き直しをしながら予算修正を行っていたらそのようなことがあありそうですが、「DIGGLE」を使用していたので、前回の予算のコピーが簡単に出来たり、前回作成予算や見込から変化した箇所の比較がわかりやすくできたので、根拠がわからなくなるようなことはありませんでした。
– お役に立てたなら良かったです。ちなみに広瀬様が説明をするにあたって以前の予算数値と修正する予算数値を比較されることもあると思いますが、Q&Aのときに質問に回答するために過去のデータをひっぱってくることもありましたでしょうか?
広瀬:結構ありましたね。「DIGGLE」から数値を引っ張って説明もしました。
– 以前、お話を伺った際に「DIGGLE」を活用することで新規事業の収益性の可視化ができたと仰っていただいたことがあったのですが、もう少し掘り下げて具体的にどのような形で可視化できたのかお伺いしてもよろしいでしょうか?
広瀬:上場審査中は祖業に加えて、新規事業を立ち上げて伸ばしていくフェーズだったので、新規事業の収益性を可視化したいという話が証券会社との会話の中でも出ていました。具体的なアクションとしては、「DIGGLE」上の「事業セグメント機能」を使って、費用を一定の基準にのっとって各事業に配賦して、それぞれのサービスの利益を仮定で見ることができるようにしました。その結果、審査中もある事業はこれだけ利益を出すことができています、といった説明を、根拠を可視化してできるようになりました。
– ありがとうございます。その他、予実管理に限らず、もし上場前のタイミングに戻ったら、このように業務を展開していくな、と思うことはございますか?
広瀬:たくさんあるのですが、一番は上場審査対応をする人員を張るということでしょうか。上場したときのIPOチーム主担当は4人でした。時間を戻すことが出来るのなら、経理や法務統制メンバーなどを入れて、実務と考える人を分ける対応をしたいですね。
– なるほど。当時の主担当4人はどのような構成だったのでしょうか?
広瀬:私と、上席の取締役と、グループのマネージャーと経営企画担当者でした。IPO準備だけではなく、マネジメント、日常業務、月次決算などを並行して行っていたので、かなりマンパワーはかかっていました。
システム導入について

– 最後にシステム導入をいただいて効果を感じられている点について、お聞かせいただけますでしょうか。
広瀬:入力や収集工数の削減や、仮予算を前年の予算や実績からコピーして作成できるなど色々あるのですが、管理部門の視点で言いますと属人性が解消されたということが挙げられます。「DIGGLE」を入れる前は、エクセルで、事業部門から数値を収集して、合算して・・などとやっていたので、エクセルの達人がいないと運用出来ないような状態でした。「DIGGLE」を入れたことで、属人的に運用するということがなくなり、継続性を担保することが出来ました。
– ありがとうございました。
Q&A
Q1:事業部サイドで予算や見込を入力されるのは部長レイヤーの方とお話されていらっしゃいましたが、もう少し下のレイヤーの方々に数値に対するコミット意識を高めるようなことはされていらっしゃいますでしょうか?
広瀬:会社として基本的には、各部門長にしっかり数値を見て貰うようにしており、その下のレイヤーのメンバーに対してのアクションは、部門長に一任している状態です。
Q2:人員計画の作り方について、トップダウン的に目標数値を達成するにはこれぐらいの人員が必要だよね、といった形で作られているのか、ボトムアップ的に必要人員数をあげる形で作られているのかをお伺いできますか?
広瀬:後者のボトムアップ型ですね。人事から各事業部に確認し、月別に必要となる人員数を事業部サイドから出して貰っています。その人員計画に、標準単価として定めている人件費を掛け合わせて人件費予算を作成し、その数値を見て調整などは行っています。
Q3:予算や実績などは、どのレベルのレイヤーまで共有されていますか?
広瀬:細かい予算と実績の差異は部門長レイヤー以上ですね。部門長の中にも色はあり、取締役レベルがPL全体を知っており、各部門長は自部門の予実差異まで把握できるようにしています。
Q4:経理と経営企画の業務分掌についてお伺いできますか?
広瀬:経理と経営企画は分けています。経理が費用を取りまとめていて、経営企画は売上を取りまとめるような役割分担をしていて、それらを「DIGGLE」上で合算して利益を算出する際は、同じデータを見ながら議論を行っています。
Q5:中期経営計画などで使う3ヶ年とか5ヶ年などの数値は、事業部サイドからの積み上げで作成されていらっしゃいますか?
広瀬:上場準備中は、中期経営計画も緻密には積み上げておらず、年度予算を集計した後、集計した数値をベースに、売上やKPIの伸び率を勘案して作成していました。
Q6:中期経営計画の作り方を審査時に指摘されることはありましたか?
広瀬:作り方について聞かれることはありました。二ヶ年目の売上はなぜこのような数値になっているのか、KPIと絡めて説明を求められたことなどもありました。
Q7:経費の部門ごとの配賦について、どのような経費をどのような基準で分けられているかなど差支えのない範囲でお伺いできますでしょうか?
広瀬:事業で使った費用、マーケティング費用、バックオフィス費用の大きく三類型ですね。その中で、人件費とかマーケティング費は大きくなりがちなので、色をつけたりもしています。共通経費で言うと、緻密には配賦基準を設定していませんが、サービスに費やした人数を元に割っています。
Q8:経営企画を部門として置いたタイミングについてお伺いできますでしょうか。
広瀬:経理部門と経営企画部門を分けるタイミングは、主幹事証券会社と契約をして本格的に審査が始まるであったり、精度の高いフォアキャストを提出しなくてはいけないようなタイミングで分けるのが良いと考えています。
話者紹介

オープンワーク株式会社
執行役員 コーポレート部門管轄 広瀬 悠太郎
2009年に立命館大学卒業後、NTTコムウェアで会計関連システムの開発・運用に従事。
2011年よりリクルートグループの経理部門において、
リクルートホールディングスの連結/単体決算・開示業務に従事。
2019年2月にオープンワーク株式会社へ入社し、2023年4月に執行役員に就任。
以上、セミナーの内容をお伝えしました。
実際にIPO前にご入社されて、0ベースで予実管理体制・見込管理体制を構築されてきた広瀬様のお話からは、限られたリソースで上場審査対応を行う大変さや、適切な報告を行うための体制構築の重要性などがよく伝わってきました。
「DIGGLE」は、組織の距離を縮め、企業の未来の質を上げる予実管理クラウドサービスです。経営管理フローの最適化と経営情報の一元化により、業務効率化と組織間のコラボレーションを促進し、迅速で質の高い意思決定を支援します。予算策定・予実突合・見込管理・レポートといった、経営管理業務全体を「DIGGLE」上で一気通貫で行うことで、予実ギャップの要因把握・アクションの早期化と業績の着地予測制度の向上を実現します。予実管理体制を整えたい企業のご担当者様はぜひご検討ください。